“モニター診療”誕生への道のり(2)

ICECの藤江です。

前回、私の父の歯科医療に寄せる並々ならぬ関心の高さと、身を挺した体験に由来するアドバイスについてお話ししました。そんな父の最大の協力は、実は口腔内カメラそのものにあります。父は大手電機メーカーに勤務し、日本のものづくりの一端を担ってきました。

アメリカで根管治療の専門医に義務付けられたマイクロスコープは高価で、使いこなすためには高い技術を必要としています。しかも、視野や操作性が特殊なため、1日に数人ほどしか治療できないほど疲れてしまう代物です。

もっと簡単にマスターでき、診療の負担を軽くする技術ができないものか…。そこで考案したのがモニター診療です。口腔内カメラが映し出す映像には死角がなく、拡大可能で、カメラを動かす方向と一致しています。

つまり、シンプルでストレスの少ない操作性と視認性に優れた映像によって、治療の質の向上と歯科医師の負担軽減の双方を実現しているわけです。

口腔内カメラが現在の形態になるまでには、トライアンドエラーの連続でした。たとえば、カメラを動かす方向と映像を一致させるアイデアは、診療所にモニターを設置し、実際の診療を想定しながら練ったものです。

映像の上下と左右が、カメラを使わずに見た口の中と一致していないと治療はできません。そこで、父を伴って長野にあるカメラメーカーに足を運びました。

 

技術の裏付けとして特許を取得

カメラメーカーとの交渉では、かなりの部分を父に任せました。電機メーカーの技術者だった父の言葉の方が説得力と重みがあると考えたからです。これが功を奏したのか、メーカーとの開発は順調に進み、口腔内カメラの革新的な技術の裏付けとして特許の取得にも成功しました。

父は電機メーカーで特許関係の仕事にも携わってきたこともあり、この時の経験が有効に活用されたわけです。

父曰く「私が現役の頃は、アメリカの技術を真似して追い越せ、という時代。製品を購入して分解して研究し、アメリカの特許をいかに逃れて日本の技術を進化させるかに注力してきました」。

そんな父の目には、十年一日の歯科医療の世界が実に歯がゆく映っているようです。

口腔内カメラが出来上がったのち、同カメラを使った治療に関する実験をして論文を作成するなど、普及に力を入れてきました。今年は30名の歯科医師に実験協力をいただく予定です。技術の普及には大変な時間がかかります。

辛口の父は「歯科医は歯科医療の進歩に関心がない」と憤りますが、果たしてどうでしょう。
私は歯科医として、同じ志を持つ歯科医がもっといるはずだと信じています。

 

著者プロフィール

口腔内カメラ教育センター
代表 藤江英宏(ふじえひでひろ)

口腔内カメラを使った「モニター診療」は、口の中を撮影し、その数倍~20倍の映像を見ながら治療をする方法で、2002年に私自身が考案した新しい治療方法です。