“モニター診療”誕生への道のり(1)

ICECの藤江です。

口腔内カメラとモニター診療のことをお伝えするとき、私の父の存在を抜きに語ることはできません。実は、口腔内カメラは父の知識と経験があったから完成したようなもの。そこで、今回は父についてお話ししたいと思います。

父は常々、進歩のない歯科医療への不満を述べていました。曰く、「歯医者の使っている機械は私が小学校の頃(1930〜40年代)からほとんど変わっていない」とのこと。その一例としてドリルがあります。

昔は足踏み式だった動力がモーターに変わった程度。歯科医が患者の口を覗き込んで治療する形態はまったく変化していない、というわけです。たしかに、他の分野の医療機器は日本の高い技術力を後ろ盾に、大きな進歩を遂げてきました。内視鏡などはその最たるものと言えます。

では、昔から歯科医の治療姿勢はなぜ変わらないのでしょう。なにかメリットがあるのならわかります。しかし、私が知る限り、百害あって一利なし。楽な姿勢ではないので、腰や首を始め、体に大きな負担がかかります。

頼りになる“患者目線”のアドバイス

ひとりの患者としても歯科医療に関心を寄せていた父ですが、私が歯科医師を目指し新潟大学に入学した頃から、その関心はさらに高まりました。たとえば、大学ではどのような治療法が指導されているのかを知るため、患者として東京医科歯科大学に足を運び、モニターを志願。研修医や学生の治療を自らの口で体験してきました。

父曰く「自分の倅が歯学生になったが、私は歯科医のOBではないのでなにもアドバイスができない。そこで、歯学生がどのような心理で技術をマスターするのか、自分の口で体験して感じたことを伝えたかった」とのこと。

技術が未熟な研修医や学生の治療は敬遠されるのが普通です。実際、モニターに手を挙げる人は少なかったと聞きます。父がその身を呈して私を応援してくれたわけです。

父の私への協力はこれだけにとどまりません。私が歯科医となった後も、様々な意見を伝えてくれます。長年に渡って歯科医師を厳しく観察してきただけあり、患者目線のアドバイスはなかなか的確です。

私が気づかないことに気づき、教えてくれることもしばしば。歯科医ではないからこそ分かる部分もあるのでしょう。父の意見を参考に、患者への説明の仕方などを工夫したことも少なくありません。

(つづく)

著者プロフィール

口腔内カメラ教育センター
代表 藤江英宏(ふじえひでひろ)

口腔内カメラを使った「モニター診療」は、口の中を撮影し、その数倍~20倍の映像を見ながら治療をする方法で、2002年に私自身が考案した新しい治療方法です。